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連載 味覚の航路③ -兄は狩人-

実家の周りは山に囲まれ、近くには大きな川が流れており
景観は今も昔もほとんど変わりがありませんが水質の違いは歴然・・・

小学生の頃夏休みになると一日の大半を川で過ごしていました
水温は夏でも刺すように冷たく一度入って出ると
次に入る時に躊躇するほどに体に堪えます

水面に乱反射する太陽の光を浴びつつ目を凝らし水底を見ると
優雅に流れに身を任せていたと思えば矢のような鋭い速さで
魚たちは無数にあるいは単独で鱗をきらきらさせながら泳いでいます


二つ上の兄と私は川岸に着くと目的の大きな岩まで
川から出た石に飛び移りながら移動します
途中静かに川に入り息を止め石の下に体をかがめ
顔を水中に入れ覗きます

水の中の丸い石には濃い緑の苔が生えており
指で拭ったような跡が無数に付いています

鮎は自分の縄張りの石に何度も体をこすり付け
苔を削り取りながら食べているのです

ひとつ石を決め鮎を待ちます
兄は銛を持ち息を潜めます

聞こえてくるのは
近くでやさしく岩にあたる水の跳ねる音と
山にこだまする蝉の鳴き声
川幅が広くなった川下では大きな流れが
轟音のように響きます

一閃
兄の銛は迷いなく水中に放たれます

銛を持ちあげ腹を貫かれた鮎を網に入れ
次のポイントへ進みます

大きな岩に着く頃には5~6匹獲っており
2人で乾いた枝と良く燃えそうな枯れ葉を探したら
岩のいつもの場所の凹みで火をおこし鮎を焼きます

私はしっかり目に焼かれた鮎を背中側からかぶりつき
ホクホクとした身を口いっぱい頬張り
皮の旨みを味わい
内臓の苦みを楽しみ
頭と尾ををばりばり噛み砕き
文字通り鮎を骨まで愛しました

獲れたその場で食す贅沢の極みです

うなぎ、ナマズ、スッポン、鯉・・・
川で獲れたものはその日のごちそうになり
食卓にあがります

今の私の料理に対する価値観は
この自然から培われたものであり
記憶と経験の素晴らしい財産になりました

私も兄から魚の獲り方や火のおこし方
自然が相手のテクニックを教わりましたが
やはり兄の方が上手です
大人になると兄は釣狂となり
今でも野生の勘を研ぎ澄ませているようです

















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